Blog

IIAI AAI 2019にて、自己受容・他者受容を高める手法の提案に関する研究を発表し、赤木がThe Best Student Paper Awardを受賞

2019.8.28

2019年7月7日から12日まで富山市で開催された「先進的応用情報学に関する国際会議 (IIAI AAI 2019: 8th International Conference on Advanced Applied Informatics)」において、赤木がThe Best Student Paper Awardを受賞しました。
注)IIAI: International Institute of Applied Informatics

■論文のタイトル:
A Method to Enhance Self-Acceptance and Acceptance of Others through Collaborative Team’s Role Recognition
(和訳:協働するチームの役割認識を通じて、自己受容・他者受容を高める手法)
■著者:
Mayu Akaki, Nobuyuki Kobayashi, Seiko Shirasaka, Makoto Ioki

論文の内容の一部をご紹介します。
一部のみの記載のため、詳細について知りたい、本研究を活用した研修やワークショップに関心があるという方はTUDまでぜひお問合せください。



研究の概要

■目的
チームメンバーの多様な強みを活かすことで、チームパフォーマンスを高める手法を提案する。

■提案内容
個々人の役割認識を二軸図で可視化し、その結果をもとにチームの役割のバランスを良くするためのアドバイスを記載したアドバイスシートを第三者から送る。

■提案手法の効果
①もともと自己受容・他者受容が低い被験者は、本研究で提案する「アドバイスシート」を受領することで、自己受容・他者受容が向上する。
②自己受容・他者受容が高い被験者も、「アドバイスシート」を通じて他のメンバーを理解しようとする行動に変化が生じる。

■背景
その背景には、多様性推進や女性活躍推進に携わる中で感じてきた違和感があります。まず、日本の多様性推進に関する取り組みは、ジェンダーに偏りすぎているという事実があり、属性に関する多様性ではなく「個」の多様性に着目したいと考えました。



次に、多様性の活かし方に関する研究が少なく、多様性を活かすことを促す手法を提案したいと考えています。よく知られているCollective Intelligence(集合知)に効くと言われているc-factorも要因ではあるものの、「多様性をどう活かすか?」というところまでは述べていません。

■先行研究

これまで述べた課題意識に関連する先行研究を探す中で、「自己受容」と「他者受容」に着目しました。先行研究では、自己受容は他者受容の条件であると述べられています。また、自己受容は他者からの受容によって高まるとも言われています。[1] [2]
役割認識がチームのパフォーマンスを高めるということも先行研究でいわれており、Belbin (1981) [3] は、チーム内での相対的な強みを正しく認識し適応することで、チームの有効性を高めると述べています。
本研究では、個々人の自己受容・他者受容の段階に応じたアドバイスを第三者から送ることを通じて、役割認識を高め、チームのパフォーマンス向上に繋げることを目指しています。
また、Belbin (1981) [3]は、上下関係のあるManagement Teamsにおける役割分類を提示していますが、本研究では、フラットな関係のチームにおける役割を二軸図上に示す、という手法を取っています。


■提案内容

本研究では、個々人の役割認識を二軸図で可視化し、その結果をもとにチームの役割のバランスを良くするためのアドバイスを記載したアドバイスシートを提案しています。
アドバイスシートは3つのステップで作成します。


事前アンケートで把握した各メンバーの役割を二軸図上にプロットで示します。
横軸は「収束/発散」です。アイデアを収束させる場面、発散させる場面のどちらでより強みを発揮しているかを聞いた結果を反映します。 縦軸は「ロジカル/エモーショナル」です。意思決定の際に直感と論理のどちらを用いるかを聞いた結果を反映します。 アドバイスは、チーム内で役割のバランスが良い(4象限それぞれに該当するメンバーがいる)方が、パフォーマンスも高まる、ということを前提に個人向けとチーム向けに記述しました。




■手法の評価

Step1~3をチーム活動に取り組む社会人と社会人大学院生11名を対象に、2ラウンド実施しました。

Round1: 事前アンケート①→アドバイスシート受領→約1週間ワーク→事後アンケート①
Round2: 事前アンケート②→アドバイスシート受領→約1週間ワーク→事後アンケート②

事前アンケート①と、事後アンケート①②で答えてもらった自己受容と他者受容のレベルを比較・分析し、評価を行いました。アンケートの自由記述をオープンコーディングで評価し、思考の変化についても分析しました。


■評価結果の詳細

評価の結果、大きく2つの結果が得られました。

自己受容・他者受容のレベルの定量比較からは以下のことがわかりました。

①事前アンケート(Pre)で自己受容・他者受容が低い被験者は、アドバイスシートを受領することで、自己受容・他者受容が向上する(Pre vs Post-1/Pre vs Post-2)

特に、アドバイスシートを送る前は、「自己の強みがわからない」「他のメンバーの強みを活かそうとは考えていない」と回答していた被験者に変化が見られました。 これまでチームで取り組む際には、他のメンバーをどう活かせばいいかわからなかったという被験者からは、「二軸図を示してもらうことで、他のチームでの活動でも、その人のタイプと活かし方について考えるようになった」というコメントがありました。


オープンコーディング[4]によって自由記述を分析した結果、事後アンケート①では役割認識に対するコメントが多いが、事後アンケート②では他者を理解しようとするコメントが増えていることがわかりました。その分析結果から下記を示唆しています。

② 自己受容・他者受容が高い被験者も、アドバイスシートを通じて他のメンバーを理解しようとする行動に変化が生じる


■今後の展開

手法の改善を目指して現在も研究は進行しています。TUDでは、今回および今後の研究内容をもとに、サービスを展開していきたいと考えています。


[1] Hiroe Kawagichi, "The Study on Self-Acceptance & Acceptance of Others with Accentuation on Measures of Acceptance", Jap. J. of Educ. Psychol, VOL. XX, No.3, 1972, pp.34-42
[2] KASUGA Yumi. "A Study on Self-acceptance and its Measurement", Journal of The Human Development Research, Minamikyushu University 2015, Vol.5, pp.19-25
[3] R. Meredith Belbin, “Management Teams: Why They Succeed or Fail”, Heinemann Professional Publishing, 1981
[4] N.Kobayashi, A.Nakamoto, M.Kawase, S.Shirasaka: Comparison of Two Quantitative Evaluation Methods for Assurance Cases, International Journal of Japan Association for Management Systems, Vol. 8 No.1, 2016, pp.27-34

Contact