群馬県前橋市役所での「シティプロモーション検討ワークショップ」
2019.2.19
「前橋市住⺠の前橋市に感じる誇りを増やすには?」という問いを、 グループワークで得られた気づきから捉え直した上で、アイデアを創出する 4 時間。
前橋市の住⺠は、前橋市に「愛着」は感じているけれども、「誇り」を感じていない。だか ら他人への推奨意向が低い、という事実が平成 30 年 3 月の都市イメージ調査で明らかにな りました。(*1)
本課題の解決に繋げるため、TUD の三冨が慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジ メント研究科のソーシャルデザインセンター(*2)として、同センターの伊加田直孝・阿部 菜々子とともに、群馬県前橋市政策部未来の芽創造課を中心とした前橋市役所の 16 名に対 して、グループで得た気づきを元に、問題を捉え直してアイデアを創出するワークショップ を実施しました。
新しい観点での気づきをベースに捉え直した問題を設定、そこからアイデアを創出した。参 加者アンケートによる NPS は76ポイントを記録。(*3)
以下はワーク中に得られた「気づき」「捉え直した課題」「創出したアイデア」の例です。なお、捉え直す前の課題は「前橋市住⺠の前橋市に感じる誇りを増やすには?」。
参加者の特性を把握。職員の蓄積された情報量を表出化し、気づいていなかった側面に気づけるワークを設計。
▽課題を捉え直すためのエンジンとなる気づきの抽出
参加者は全員前橋市の職員のため、前橋市についての蓄積された情報量がかなりあることが想定されました。そのため、蓄積されているが言語化できていない情報を表出化するためにブレインストーミングを大きく分けて、2回実施。
1回目は、数を出させるために「前橋市にいて、誰かにすごいでしょ、と言いたくなる瞬間って?」というテーマで実施。出た要素を2軸図で切り分けるワークも行いました。
2回目は、前橋を客観的に捉えるために住民の地域に対する「愛着」と「誇り」が高い京都について考えました。「京都のすごいな、と思うところ」というテーマで実施。
その後、それぞれ行ったワークから、いままで認識していなかったような気づきを抽出しました。例えば、「前橋市には触りたくなるものがなぜかある」「前橋には”固いもの”が多い」などになります。
▽気づきをベースとした問題の捉え直し(リフレーミング)
次に、抽出した気づきから問題の捉え直しを行いました。理由としては、「前橋市住民の前橋市に感じる誇りを増やすには?」という問題を解こうとした場合、「年に一度の大きなお祭りを開催する」などの安易なアイデアが出てくることが容易に想像できます。そうではなく、新規性のある答えを出すために、問題から想定される解空間の範囲をある程度絞り込む必要があります。
例えば、気づきとして「前橋市には触りたくなるものがなぜかある」「前橋には”固いもの”が多い」が抽出されていた場合には、「市民に前橋市の”触感“を感じてもらうためにはどうしたらいいか?」と定義し直します。そうすると、この問題を解くと「年に一度の大きなお祭りを開催する」というアイデアは出ないはずです。そして、問題を解いたときに出るアイデアは、気づきと関連するものになるので、新規性の高いものになる確率が高まります。
以上の考え方をベースとして、問題の捉え直しを行いました。
▽捉え直した問題を解いてアイデアを出す
そして、捉え直した問題を、参加者個人それぞれに、アイデア創出シートを用いてアイデアを考えてもらいました。
ここでは、アイデアの精緻化などは意識せず、考えたものをクイックに記入していただき、どのようなアイデアを自分が考えることができるのか、という体験を重視しました。また、最終的に各チームの代表者にアイデアの発表も実施。
TUDでは、本ワークショップのような今までにない気づきを得て、課題の捉え直しを行い、アイデアを創出するものなど、様々なワークショップの設計・実施が可能です。ぜひお問い合わせください。
(*1)https://www.city.maebashi.gunma.jp/material/files/group/7/chougi_H30522_S1.pdf
(*2)http://www.sdm.keio.ac.jp/research/sdclab.html
(*3)以下アンケートの抜粋
また、以下のような感想を得た。
・普段考えないようなことを考えるので、とても勉強になる
・対等でフラットな人間関係を作れることが、組織にとって大きなメリットと感じました
・アイディアや思っていることが素直に出やすい
・普段触れられない新しい手法を学べる
・業務に活かせる内容である
・視点の違う意見を組み合わせることで、これまでに考えられなかったような視点を持つことが出来た
・前例踏襲主義になっている自治体職員にこそ受けてほしい
・普段の仕事では学べないことを学べる
・参加者主体で意見をどんどん出し合える
・説明内容が非常に論理的であるよう感じた
・専門的だけど、取り組みやすい
また、本ワークショップは、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科委員長の前野教授、同大学院の広瀬特任助教にサポートしていただきました。また、同大学院の伊加田直孝さん、阿部菜々子さんとともにワークの設計・実施を行なっています。